2019
03.25

ジャパンSDGsアワード受賞。 新参者だった伊藤園の三方よしの茶産地育成事業とイノベーション戦略。

ESG投資

ESG投資の市場規模が拡大し、投資を受ける企業ではSDGsを視野に入れてバリューチェーン全体で価値創造する取り組みがより強く求められるようになってきています。

SDGs(持続可能な開発目標)とは、20159月の国連サミットで採択された持続可能な世界を実現するための17のゴール・169のターゲットから構成さる「地球上の誰一人として取り残さない(leave no one behind)」を誓う2030年までの国際目標です。

2017年に日本政府は、「ジャパンSDGsアワード」を創設し国内の団体・企業の取り組みを表彰しSDGsを推進しています。

今回は、初代ジャパンSDGsアワード特別賞を受賞した「茶畑から茶殻まで」をバリューチェーンとする伊藤園の課題解決の取り組みについて話を聞きました。

お〜いお茶が消費者に届くまでのこだわり

自然、健康、安全、良いデザイン、美味しいの5つをコンセプトにものづくりをする伊藤園。2006年にはコーヒーチェーンタリーズコーヒーを展開する運営会社を買収し、お茶以外の飲料市場にブランドの買収で参入を果たしています。

ただ、売り上げの90%はお〜いお茶によるものです。その長く愛されているブランドの味を維持する仕組みが構築されています。最終的な火入れ工程の工場は日本に静岡と神戸の2箇所あり、その後のパッキングをしている全国の工場から毎日、本社のある東京新宿区にサンプルが送られ、ブランドマネージャーと数名が味の確認をしています。実は、お〜いお茶のペットボトル容器には産地は書かれていません。それは、日本各地で栽培された茶葉を配合しているからです。農作物の茶葉は年により味が異なってくる。その時々の状態に合わせた配合により、お〜いお茶の味は作り出されています。

新参者のお茶屋が作りだした三方よしの仕組みがSDGsにつながる

伊藤園の行う新産地事業とは、耕作放棄地に地元の業者を募り、伊藤園がレシピとノウハウを提供してお〜いお茶に使われる茶葉を生産する仕組みです。

なぜ、そのような事業を始めたのか、広報の古川さんに聞いた。

「そもそも創業期の伊藤園は、お茶の葉を量り売りしていました。量り売りは茶葉が酸化してしまい品質が落ちるので、空気を抜いてパック茶にブランドをつけたのが初めのイノベーションです。乾物屋の暖簾分けで始まった新参者のお茶屋の伊藤園には、市場から茶葉を買い取ることが難しく、当時から農家と契約をして全量買い取りをしていました。
その契約農家と2001年に開始した耕作放棄地の活用した新産地事業を合わせて茶産地育成事業としています。耕作放棄地を活用することで、自治体も喜び、我々伊藤園も作って欲しいものが作ってもらえる仕組みになっています。」
 

その耕作放棄地で生産をするのは、農業経験のない地元の事業者でさえも茶農家となることが可能だそうです。そもそも、お茶はツバキ科の植物で木が強く、病気になりにくいので育てやすい植物です。そのような茶葉の特性とブレンド茶という利点とが合わさり茶産地育成事業がSDGsを視野にバリューチェーンの課題を解決しています。

次回以降、その仕組みが財務面にどのような影響を与えるかを検証していきます。