2019
11.06

最新のESG投資を学ぶ。(第二回)

ESG投資

パリでは「PRI in Person」と呼ばれる、PRIの総会が開催されました。今年は世界各国から1700を超える署名機関の代表者がこの三日間わたるイベントに参加しました。

前回の記事に続き、今回はPRI in Personで人気のあったセッションを二つ紹介します。

SDGsを投資戦略に組み込む

「SDGsを投資戦略に組み込む」ことに関するセッションの会場は400人以上入る大きなホールでしたが、満席で立ち見が出るほど人気でした。

このセッションでは、投資運用会社や年金基金がどのようにSDGsを投資戦略に組み込んでいるのかについて、4人の実務家によるパネルディスカッションが行われました。

ある会社は投資をする際に、社会インパクトの側面から次の3つの質問を重要視しています。

  1. その産業とSDGsの関係は?
  2. 投資先候補の企業はどのように社会貢献できるか?
  3. 投資会社として、どのように企業のポジティブインパクトを強化し、ネガティブインパクトを軽減できるか?

そして、最近の投資例として鉄道会社をあげていました。

鉄道は移動手段の中でもっともエネルギー効率が良く、環境にも優しいです。そのため、将来のモビリティーシステムにとって重要であると考えたそうです。社会面では、鉄道は移動手段として安全なだけでなく、あらゆる人が求めやすく、アクセスもしやすいです。さらに、財務面からは、鉄道は企業利益が底堅く、周期性のある市場でもありません。以上の点を評価して投資を行ったそうです。

上場市場でインパクトを特定し測定する

このセッションで紹介された「Impact Management Problem(以下: IMP)」の議論では、欧米でのこれまでのインパクト投資、またその測定、データに関する歩みが紹介されました。IMPの議論では、インパクトについて以下の4つの段階について話していました。

第一段階

ネガティブインパクトがあるのはわかっているが、まだ誰もそれを防ぐために何もしていない段階。

第二段階
リスクを軽減する段階。
この段階では投資家はESGにフォーカスしており、“Effort data”が投資家から求められるようになります。つまり、企業の方針や慣行、活動がネガティブインパクトを軽減するかを示すデータです。
 
第三段階
ステークホルダーへの価値創造の段階。
この段階では、アウトカムに関するデータが求められるようになり、企業の活動が実際にどのようなアウトカムにつながっているのか聞かれます。挙げられていた例では、従業員訓練は実際に生産性やスキルの向上につながったのか、またどのような社会のアウトカムにつながったのかなどがありました。
 
第四段階
SDGsの達成段階。
現在のメインストリームであるこの段階は、今までのデータに加えて、インパクトの深さやスケール、さらには効果期間、企業の活動が描いているインパクトをもたらさないリスクなどが求められているそうです。そのため、投資の意思決定にも、その企業の商品やサービスはSDGsを改善、または貢献するのか、という問いが大変重要になっているそうです。

 

現在、欧米諸国は第四段階にいると言われています。一方、日本企業の多くは第二段階、もしくは先進的な取り組みをしている企業であれば第三段階にあると考えられます。いまだにほとんどの企業は、「リスク軽減」のために報告書などで自社の方針や取り組みを説明するに止まっているのが現状です。