2019
04.29

債券におけるESG投資、企業に求められているものとは。(第一回)

ESG投資

近年、企業の長期的な成長のためには、環境(Enviornment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)が示す3つの観点が必要だという考え方が世界的に広まっています。投資の意思決定において、これらの観点を考慮に入れることを頭文字をとってESG投資と呼びます。最近のESG投資は、株式のみでなく債券・社債の投資判断にもESGの要素を取り入れる動きが拡大しています。今回の記事では、債券におけるESG投資の動向について説明します。

債券の特徴

債券と株式の基本的な違いは、債券はあらかじめ「いつまでに、どれくらい戻るか」が定められているが、株式は企業の成長によって変動するためそれらが定められていないという点です。債券はお金を満期までに返す義務があるため、株式より安全性が高いですが、企業が倒産した場合には返済されない可能性があります。このリスクは「信用リスク」と呼ばれ、投資家などは債券を購入するとき企業の経営状態を確認するために「格付け」を参考にします。格付けとは債券の成績表のようなもので、格付け会社と呼ばれる専門の民間会社が調査をし、公表します。そして昨今、格付けの評価にESGの観点が取り入れられるようになりました。

格付け会社がESG要素を評価に含める

債券へのESG投資が進んだ要因の一つとして、債券や金融商品をランク付けする格付け会社が、ESG評価を取り入れるようになったことが挙げられます。世界最大手の格付け会社であるS&Pグローバル・レーティングスは2019年1月に、同社の企業信用格付けレポートにESG評価のセクションを設けることを発表しました。 S&Pグローバル・レーティングスは2019年の内に同社信用格付全体の約40%にあたる約2,000社の格付けレポートにESGセクションを盛り込む予定です

日本のESG債券投資の動向

そして日本でも同じような動きがとられています。2017年には、日本の代表的な格付け機関である日本格付研究所( JCR)と格付投資情報センター (R&I)が企業の信用力評価に際して、ESG要素を考慮することを宣言するPRI格付声明 (Statement on ESG in Credit Ratings)に署名しました

発行体(企業)に求められること

ESG債券投資の拡大は、発行体(債券を発行する企業)にとってESGの取り組みが資金調達に大きく影響することになります。今後、格付け機関や投資家から、ESGの取り組みを評価するために情報の開示を求められたり、対話を求められることが増えると予想されます。期日までの返済や利払いの確実性を求める債券と、収益の最大化が求めらる株式の間では重視するESG要素が異なります。発行体はその違いを考慮した上で対策を取る必要があります。